木遣り悪戦苦闘

2004年1月 

 「木遣り」を勉強することになったそもそものきっかけは、昨年の夏、住吉踊りで御一緒している先輩の先生にお誘いを受けたことからはじまります。声の訓練にもなるし勉強してみたらどうかと。これは亡くなられた古今亭志ん朝師匠が「女流でやるように」と始めた事から続いているもので、はじめは軽い気持ちでお稽古に行ってみたのですが、やってみるとこれがとても難しい。ところが成り行きで、お正月の国立劇場「新春名人会」に出演することになったから、さあ大変! 他の方は芸歴大先輩の方達ばかりですし、その上最低一年はお稽古されています。とにかく皆さんの足を引っぱらないようにと、奇術の松旭斎美智師匠と花島皆子師匠の神楽坂のお店で、営業時間外に特訓につぐ特訓となりました。でも何度教えて貰っても、なかなか音が取れません。

 木遣りというのは音頭の方が(一人)「ヨーイヨーイヤァ−リョオー」と声を出しますと、続いて川といって(8人〜9人)が「エーエーヨォーオォオォー」といった感じで声を掛けるんですが、これが揃わないとダメなんです。ところが私はどうも何度教えてもらっても、なかなか音が取れません。しかしもう、揃いの提灯や扇子や紋付きは用意してしまってますし、何としてもやらなければ周りの師匠達にもご迷惑がかかります。こうなるともう必死で、食事しながら頭の中で言葉をなぞってますし、夜中に目が覚めて急に声を出したり、電車の中でもイヤホンでテープを聴きながら息を殺して練習してるんですけど、夢中になるといつの間にか大きな口開いてパクパクと唄ってるから、気が付くと周りの人が見てるし・・さぞかし変な人だと思われたことでしょう。そんなこんなの悪戦苦闘の末、お正月2日〜6日までの出番はまさに緊張の連続でした。

 でも初日には、鏡割りにも参加させていただき、緊張の中にもお正月らしい雰囲気も味合わうことが出来ました。しかし初日には、木遣りをやってからすぐに本牧亭の初席に出演、終ると演芸場に飛んで戻って2部の木遣りに出るという慌ただしさ。次の日も2回ありましたが、この日には合間に師匠宅に行かねばならず、とにかく集中力を保つのが大変でした。本来なら私は新米ですし、そうそうたる大先輩の中に入って色々とやることがあったのですが、なかなか上手くは行かないもので・・・。

 とは言っても新春名人会『名人会!』の舞台で木遣りや手拭い投げをすると、やっぱり気分が良いですね。それに楽屋では女性ばかりですので、着物の着方から何から大変丁寧に教えていただきました。講談協会では定席が少ないせいか見逃されて来た事が、ここで色々と勉強させていただき有難かったです。まあ、初めてにしては何とかなってるとは言って貰えました。相変わらず住吉踊りのお師匠さんには怒られっぱなしでしたけど。でもお陰様で、6日目には着付けもだいぶ上手くなりました。講談も日々これくらい気を張ってなければいい講釈は出来ないんでしょうね。新年早々、とても有難い経験となりました。


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